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人植学会コラム・書評

〈書評〉みどりの処方箋―ヒーリング時代の緑の使い方―
岩崎 寛 著(グリーン情報・1,800円+税)

2024. 2. 1. 山根健治 評

 現代社会は間違いなくストレス社会である。高齢化,デジタル化,災害,コロナ禍や世界各地の紛争のためにさらにストレスが増大している。もし,ストレスチェックでストレス高めと評価されたらどう対処すればよいか?悩ましいところである。

 本書はストレスが蓄積するばかりの私たちにとって,「みどり」が処方箋になることを説いている。第1章は「みどりの健康効果」である。みどりのもたらす癒やしの効果を心理テストや唾液コルチゾールの測定により,客観的に示している。第2章では,「花の効果」についても書かれており,私を含めて花好きな人にはお勧めの章となっている。第3章以降では,高齢者施設,病院,訪問看護,公園,花壇,さらには自然観察と健康プログラムのイベントなど様々な事例における園芸活動の効用について紹介している。現代で求められている地域ケアの一翼を担うものばかりである。

全体を通して,各章の小見出しを『カルテ』として,全てのカルテについてカラーのグラフや写真が付いていて,科学論文に不慣れな読者にも分かりやすいように配慮がなされている。加えて,エビデンスとなる論文や報告のリストを明記しており,しかも,著者らが自ら行った研究を基にしている。そのため,筆者は自信をもって情報を発信しているであろうし,読者が疑問に思ったときは著者と議論することも可能となりえる。

果たして「みどり=植物」が本当に私たちの処方箋になるかどうか?本書を読んで,一緒にお考えいただく価値はあるであろう。